ファズが歪む原理

エフェクターとしては歴史の長いファズ。レトロなファズはジミヘンが有名だろうか。ジャックホワイトのように現代でも当時のエフェクターを使用するアーティストもいる。
あるいはシューゲイザーのようにファズを何段も重ねたりすような、例えばマイブラとか。パンクにもアンビエントにも何にでも見かけるファズ。レトロにもモダンにも弾き手次第のエフェクターと言えよう。

目次

ギターからの信号は交流

アンプのスピーカーが空気を震わせて音を鳴らす。音とは空気の波だが、アンプより前は電気の波だ。どんな形の波かによって、アンプから出る音はも変わる。その電気の波をエフェクターやギターで作るわけだ。
ギターから出る音の正体は電気の波だ。電圧がゼロボルトを基点にプラスとマイナスに振幅する波。つまり交流だ。アンプにつなげはそれがそのまま増幅され、つまりスピーカーを動かすパワーが大きくなり、より大きな音が出る。
増幅されればどんどん大きな音をだせるが、アンプには限界がある。信号をどんなに増幅させてもアンプの設計より大きな電圧は扱えない。結果として波のてっぺんと下限は切り取られ、四角い波形になってしまう。大昔、まだファズの音が知られるより前、アンプの音を大きくし過ぎたプレイヤーがその音をカッコいいと思ったのがファズ誕生のきっかけと言われている。四角い波形。この形の空気の振動は人間の耳にはファズとして聞こえる。

四角い波形を作るための機械


このカッコいい音を得るのにアンプを爆音で鳴らさないとならないのは不便だ。どうにかこの四角い波形を再現できないか。そうして考えられたのがファズというエフェクターだ。ギターからの滑らかでキレイな波をわざと矩形(四角)に変形させる機械。


一つのアプローチとしてはアンプでのクリップ(歪み、波形が矩形になってしまうこと)と同じように、限られた電圧内で波形を増幅させる方法。電源に9Vの電池を用いて、その9Vより大きな振幅にまでギターの音を増幅させるのだ。増幅させるために2つのトランジスターを使う。2つのトランジスターを繋いで、増幅させた信号を更に増幅させる。ファズフェイスがまさそうだ。ギターからの入力次第で増幅される幅も変わるため、ギターの音に敏感に反応する。ピッキングのニュアンスやボリュームによって音色が変わる。楽器らしいとも言える。

もう1つのアプローチは波形のてっぺんと下限をダイオードで切り取って捨ててしまう方法。ダイオードの一定の電圧をかけないと電流が流れない性質を利用する。ダイオードの先をグランドにしておくと、一定の電圧まではグランドに繋がらない=通常の波形、ある電圧を超えるとグランドに流れてしまうので波形はそこでストップ、切り捨てられた形になる。

どちらのアプローチでも矩形を得るという点では似ているが、やはりそこは楽器、音色にはかなり違いがある。ダイオードクリッパは電圧によって矩形になるのでギターのニュアンスを出すよりキッチリ歪む感じが強いように思う。ディストーションと呼ばれたりする。ゲルマニウムダイオードを使えば、より定電圧でクリップするのでより荒々しい歪みになるだろう。
これはもう試してみるしかない。自作の醍醐味だろう。

良い音について

少し話はそれて映画の話。宇宙で爆発が起こってドカーンとなったり、ビームがビュンビュン音を鳴らしてかすめたり。本来なら無音だろうなと。それでも何らかの方法で振動が伝われば宇宙船の壁を通じて人の耳にもその振動が音として伝わるかもしれない。でもそれは地球上で聞く爆発音と同じかどうかは分からない。ヘリウムガスを吸って声を出すと変な声になるのもそう。振動を伝える媒体の性質によって音は違って聞こえる。
何にせよ空気の振動を耳でキャッチすると人間は音として知覚する。感じ方は振動の種類によって様々。物理的にはただの振動。それらの中から人間は勝手にカッコいい音を見つけたり好きな音楽を奏でたり。
原音という目標があるオーディオの世界なら、たとえば周波数特性など考慮しなければならないだろう。でもファズは楽器。耳で聞いて好きかどうか。仮説と検証を繰り返して好みの音に近づけていくのが自作の楽しみかと思う。

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