エフェクター向け電子工作入門 パーツ編

エフェクターを構成する主な電子部品について。秋葉原で購入する時と惑わないように一応ザックリ理解しておこう。
また製作用の道具につていはエフェクター向け電子工作入門 工具編に記載してある。

目次

各部品を簡単に説明

  • ユニバーサル基板
  • 抵抗
  • コンデンサー
  • トランジスタ
  • ダイオード
  • IC

ファズなんか大した部品を使わない。

ユニバーサル基板とは

穴が縦横均等に空いた基板だ。レイアウトするパーツ同士をつなぐだけなので面積や形がそれに見合っていれば問題ない。

抵抗とは

電気の流れを抑制する働きをもつ。例えばLEDに電流が流れすぎるのを防いだり、分圧といって電圧を調整したりする。エフェクターなら1/4Wのもので十分。一番安いカーボンのものでいい。ただし厳密に同じ抵抗値のものを用意しなければならない場合は酸化被膜のものが適している。抵抗値の精度が高いからだ。テスターで測って同じ抵抗値のものを揃えよう。

コンデンサーとは

電気を貯める部品。どれぐらい貯められるかは容量によって変わる。交流しか通さないので、ギターの音(交流)だけ通したり、周波数特性により容量の小さなコンデンサーは高音をよく通す。コンデンサーを通った高音をグランドに捨てれば低音の強調された音になるし、逆にその高音を捨てずにアンプ側に送れば高音が強調された音になる。容量によって種類がいくつかある。オーディオの世界ではかなりこだわるパーツではあるが、エフェクターの場合どうだろう。意図的に歪ませたりしてるぐらいだし。

トランジスタとは

主に音量をアップさせたり、アップしたことにより歪ませたりするのに使う。ギターの微弱な信号を大きくするのだ。交流であるギターの波の形をした信号を、より大きな波にする。しかしエフェクターは9Vで駆動しているので、4.5Vを中央に振幅するギターの信号の上下は、増幅しすぎるとその9Vの範囲を超えてしまう。すると波形は切り取られ矩形(四角)になる。その矩形の波形がファズやディストーションの音なのだ。シリコン製は精度が高く安定しているが、ゲルマニウムのものはヴィンテージで使われていたりして、それはそれで味のあるトランジスタだ。NPNが多いがPNPというものもある。電流の向きが逆になるが、型番を間違えなければ問題ない。

ダイオードとは

電気の流れを一方向にしたり、クリッピングといってファズやディストーションの音を作るのに使われたりする。クリッピングとは一定以上の電圧をグランドに捨てることにより、波形を矩形(四角)にすることを言う。波形が矩形だとファズやディストーションの音になり、倍音を多く含む波形に近くなる。こちらもシリコンとゲルマニウムがあり、やはりヴィンテージ感の強いゲルマニウムダイオードは個性的な音になる。シリコンに比べて低い電圧でもクリップするので、より荒々しく汚い音になりやすい。好みに応じて使いわけよう。ギターのボリュームにも敏感に反応するのでゲルマニウムを好む人も多い。
LEDもダイオードの一種。

ICとは

こういった様々な部品の集合体。目的に応じてICを選ぶ。例えばディレイ用のICなどが存在する。

各パーツの特性を理解してから店頭へ向かうとスムーズだ。例えばコンデンサーは定格電圧も重要だ。コンデンサーが耐えられる電圧の上限を選ぶのだ。エフェクターで使うので最大9Vの電圧がかかる場合を想定する。安全マージンを取って3倍の定格電圧を設定するので27V以上のコンデンサーを選ぶと良い。定格電圧が大きいぶんには問題ない。まあ電圧はどのパーツでも意識しなければならないのだが、エフェクターに限っていえば9Vの電圧のなかで全てを行うのでそれほど大きな問題にならないだろう。

基板以外のパーツ

  • フットスイッチ(3PDT)
  • ジャック
  • LED
  • DCジャック
  • ボリューム
  • トグルスイッチ
  • 電池スナップ
  • アルミダイキャストケース

フットスイッチとは

押し込むことで2つの回路を切り替えるものだ。よくあるトゥルーバイパスのエフェクターは、音の入り口、出口、電源のオンオフ、の3系統を切り替えている。3PDTという種類だ。端子が縦横3列づつならぶ合計9つの端子がある。

ジャックとは

ギターのシールドケーブルを差し込む口金のことだ。ギターの場合、シールドの先端にピックアップからの音が流れており、根元のほうがグランドとなっている。ステレオとモノラルがあり、ステレオはLとRとGNDの3つ、モノラルはLとGNDの2つの端子を備える。

LEDとは

エフェクターのオンオフを視認するためによく使う。ダイオードと同じく一定以上の電圧をかけないと電流が流れないので、ファズやディストーションを得るためのクリッパーとしても使う。

DCジャックとは

ACアダプター用の外部電源のための端子だ。電池内蔵なら使わなくてもかまわない。スイッチ付きものは、外部電源の端子を差し込むと内蔵電池の回路を切る機能がある。

ボリュームとは

ツマミを回転させて抵抗値を滑らかに変化させる。可変抵抗とも言う。音量であったりエフェクトのかかり具合であったり、音をコントロールするために使う。ケースの外側から操作するものだけではなく、基板に取り付けて使う小さなものもある。

トグルスイッチとは

回路を切り替えたりオンオフしたりするためのスイッチだ。ツマミが出ていて回路をAかBかに切り替える。ダイオードの種類別に回路を作っておいて、ツマミを切り替えることによりファズの音色の変化を楽しんだりできる。

電池スナップとは

エフェクターの場合9ボルトの電池を使うことが多いため、当然9V用の電池スナップが必要になる。

アルミダイキャストケースとは

いわゆるエフェクターのケースだ。ダイキャストとは鋳造、つまり型から作った事を意味する。肉厚で頑丈なのでエフェクターに最適だ。金属のケースに入れる事によりグランドでシールドされるので都合が良い。

ディスクリートについて思うこと

エフェクターを設計するうえで大きく分けて2つのパターンがあると思う。

一つはパーツそのものの特性を活かした回路。ファズフェイスのようにゲルマニウムトランジスタの選別や組み合わせによってサウンドが決まる。例えば様々なトランジスタを試して自分だけのエフェクターを作る。そういうスタンスのものだ。

もう一つは回路の設計そのものでサウンドを作るパターンだ。パーツの特性に頼らず、回路のデザインによって意図したサウンドを作り出す。例えば荒々しいファズが欲しいがノイズは低いほうが良い、といった場合、トランジスタを選別するのではなく、ノイズを大きくしないよう増幅率を抑えたり、ノイズを相殺させて目立たせなくしたりと、回路を工夫することによってサウンドをコントロールする方法だ。

どちらも面白いエフェクター作りではあるが、できれば後者の回路図の設計によってサウンドを作れるようになりたいと思う。部品の特性に頼らず、意図したサウンドを作るにはどうしたらいいか、頭を悩ませるのが楽しい。実際には既存のエフェクターの解析と組み合わせになるのだろうが、どう組み合わせたら意図したサウンドになるのか、試行錯誤するのが楽しい。

ディスクリート回路、つまり物理的な電子部品の組み合わせで作る回路。素子の特性にせよ、回路のデザインにせよ、物理的な特性でサウンドを作るという点ではとてもアナログだしモノづくりをしている気分を味わえる。デジタル回路はクリーンで再現性が高く低コストで素晴らしいが、今時あえてディスクリートで作るのは逆に贅沢だと思う。秋葉原のパーツ屋さんも減ってきているが、できるだけ続けて欲しいなと願うばかりだ。

情報量が多い。素子の特性であったり、倒産したエフェクターの会社の回路設計者の意図を想像したりと、読み物として濃くて面白い。何度読み返しても、自分のエフェクターに対する理解度が変わる度に新鮮な印象を受ける。今の自分のレベルで全てが理解できなくても、ゆっくり学びながら読み直すと面白い本だと思う。すばらしい。

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